雪が降る日は

「雪が降ってきたね」「積もるかな」
「こんな風のない穏やかな日は、じきに積もるさ」
 そこで、Kと二人で雪見酒としゃれ込むことに決めました。
 真っ白な雪片はあとからあとから、街という街を埋め尽くすように降ってきます。何気なく空を見上げた私は――、
「なんだ、ゴミみたいだ」
 天上の薄明かりに影を落とした雪たちは、透き通るような白ではなく、皆くすんだ灰色をしていました。それがまるで、灰か埃のように見えないでもなかったのです。
 言った後で、私はすぐ後悔しました。私の無粋な発言に、Kはなんと思うでしょうか。
 けれどもKは、私にならって空を見上げながら、のんびりと言いました。
「うん、ゴミには違いないだろうねえ」
 およそKらしからぬ発言だと、私は吃驚して彼の顔を見ました。すると彼は笑って、
「神様も、時には空を掃除なさるのさ。それがこうして降って来るんだよ」
 私は思わず眉をひそめました。「空にたまった埃なのかい、この雪は」
「そうとも。けれどそれはそれ、空のゴミだからね。地上のゴミとはわけが違うよ」
「というと?」
「夢のかけらやあったかい感情なんかがね、軽いから空にのぼっていって、雲に引っかかっているのさ。神様はそれを払い落とすんだよ」
「へえ」私は、ちょうど目の前に舞い落ちてきた雪のひとひらを手に受けました。「だからこんな綺麗な形をしているんだね」
「そうとも、だからひとつひとつ形が違うのさ」
 それから二人して、この雪はこんな夢のかけらだろうとか、このひとひらにはこんな想いが残っているんだろうとか、飽かず想像して日は暮れていきました。
雪が降る日は/王求 著(2001)
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